スピードアップ練習のデザイン(セミナービデオ)
2-1. 10%スピードアップの考え方
3ヶ月で10%のスピードアップを実現するために、分解して考えます。
まず「タイムを縮める」とは具体的に何をすればよいかを見ていきます。
タイムというのは区間ペースとラップ数を掛け合わせたものです。
ここで区間ペースはプールの長さを泳ぐのにかかる時間です。
ラップ数はプールの長さを泳ぐ回数です。
例えば25mのプールで泳ぐ1500mのタイムは、25mを泳ぐのにかかる時間に60を掛けます。
ところが実際に泳ぐときは、このペースが変化します。
ペースが遅くなる割合を劣化率とすると、1に劣化率を加えたものを、ペースとラップ数の積に掛けることで実際のタイムが計算できます。
ここでペースというのは、ストローク数とテンポの積で表すことができます。
つまり実際のタイムは、ストローク数、テンポ、ラップ数、1に劣化率を加えたものの積で表すことができます。
ここではストローク数、テンポ、劣化率が変化します。
つまりタイムを縮めるということは、
-ストローク数を小さくする、つまり減らす
-テンポを小さくする、つまり速くする
-劣化率を小さくする、つまり下げる
によって実現できることになります。
「10%のスピードアップ」の全体像
スピードを現在より10%速くすることを考えたときに、これを5%と5%の2つに分けます。
片方の5%をペースを速くすることで達成して、もう片方の5%を劣化率を下げることで達成します。
ペースはストローク数とテンポの積です。
つまりどちらか、あるいは両方を小さくすることで5%のスピードアップが実現します。
例えばテンポを変えずに25mのストローク数を1減らすと、ほぼ5%速くなります。
またストローク数を変えずにテンポを0.06秒速くすることでも、ほぼ5%速くなります。
どちらも3ヶ月で達成できそうですね。
一方劣化率については、現在の劣化率を5ポイント下げるので、劣化率が大きいほど下げやすくなります。
長距離の初心者の方の劣化率は20%程度なので、姿勢を改善して力の入れ方を細かく決めれば3ヶ月で15%程度に下げることは十分可能です。
2-2. 目標の設定方法
①現状を知る
②目標の詳細化
③目標達成までのステップ化
目標を設定する最初のステップは、現状を知ることです。
現状がわからずに目標を決めても、それは「夢」にしかなりません。
現状がわかったら、目標を達成するためにどのような泳ぎにすればよいのかを決めます。
そしてその泳ぎを作るまでの過程をステップ化して、練習で着実に達成できるようにします。
2-3. 練習に必要な項目
段階的目標が決まれば、目標を達成するために練習するだけです。
ただし漫然と練習しても目標は達成できません。
達成したい目標の内容に適した練習を行う必要があります。
まず何のために練習するのか、練習の目的を明らかにします。
「減速を抑える」「加速を上げる」「持続する(劣化を抑える)」というスピードアップのアプローチに合致しているかどうかを確認します。
次に成果です。その練習を通じて身につけたい技術を明らかにします。
ストローク数やストロークレート、劣化率や心拍数などの数値指標を使うことで、練習の達成度を評価することができます。
2-4. 効果的な練習方法
ここでは練習をさらに効果的にするためのステップについて説明します。
まずタスクを組み合わせて、脳に常に刺激を与えます。
タスクを達成するために、泳ぎを具体的に変えます。
そして泳いだ後で、タスクができたかどうかを評価します。
この流れを繰り返し行うことで、目的や用途に合わせて泳ぎを変える道具箱を構築します。
「減速を抑える」「加速を上げる」「速度を持続する」という目的や、距離、オープンウォーターのコンディションなどに合わせて道具を持ちます。
そしていくつかのタスクを組み合わせた練習モジュールを練習の目的に合わせて選択して、道具を使いこなせるようにします。
2-5. 練習量の目安
練習量は、目標とする距離によって異なります。
目標の距離が1500m(トライアスロンのショートディスタンス)までであれば、普段は目標の距離の60~80%を泳ぎます。
そして練習の5回に1回以上(最低月2回以上)は、1回の練習の合計で目標の距離を泳ぎます。
次に目標の距離が3800m(トライアスロンのロングディスタンス)やオープンウォータースイムの3kmや5kmの場合、普段は目標の距離の40~50%を泳ぎます。
そして練習の5回に1回以上(最低月2回以上)は、1回の練習の合計で目標の距離の50%を泳ぎます。
また練習の10回に1回以上(最低月1回以上)は、1回の練習の合計で目標の距離を泳ぎます。